ティルプールに行ってきました。
ここは、過去3年間、毎週末通った街です。
ある縫製工場と、何度も打ち合わせをし、何度も耐え、そして、何度も裏切られ、嫌な思い出しかできなかったティルプール。
(その問題は今も解決していないどころか最高裁の順番待ちになっていますが(笑)、その話はまた今度)
この日の私は、ついに手に入れた布サンプルと共に、次の工程である染めとプリント先を探しに降り立ったのでした。
ここまでたどり着くまでも、長い長ーーーーい道のりでした。
まず、コットン、欲しい種、信頼できる農家はクリア。そして、そこからの紹介で、日本に持っていけるクオリティかつ、私の欲しい織りを生み出してくれる織り工場にたどり着くまでも、長々と時間がかかりました。ヒンドゥーびとは、死んでも次の人生が始まるそうですが、そんなことは言ってられません。早くして。そして、理想の織りを繰り返し作成し、やっと布サンプルが出来上がり(←今ココ)
コットンの種類、番手(糸の細さのことです)ミックス具合を決めて、じゃあ染めは?となった時、あまりにも、自然染めをやっているところや人が、ほぼないことに気がつきました。
ないの?
え?
ないの???
例えば、この、何度もなんどもサンプル織をしてくれた工場、ここでナチュラル染料で出来るのは3色のみです。インディゴ、鈍いピンク、鈍い黄色。
写真はインディゴ染め@織工場
なぜ3色のみかって?お客であるみんなが完璧を求めるから。完璧=色落ちしないもの=ケミカルに頼ることになります。
。。。。。。
ここで、どうしても妥協したくなくて、ある時は、Web上で電話帳検索を延々とし、電話をかけ続け、偶然見つけたあるリアイアしたおじいさんが、ナチュラルな染料を作っている、と発見、電話し生存を確認し、ディンディガルという遠く離れた町に行きました。
(ちなみにですね、インドで直電ってよくやるのですが、それはそもそもネット上の情報が正しいかもわからないからです。その工場が存在しているかもわかりませんし、相手が電話に出ても、嘘つく人もいますから、もうこればかりは、運と、あと確実に信頼できる人からの紹介があればなお良い、、、、けれど、この時の私は、まだ確実に信頼できる人からのコネが出来始めた時期で、何をするにも、まだまだ手探りでした。)
で、そのお爺さん。もうすでにリアイアされていて、
「昔、オーストラリアに輸出してたんだけど、今は誰もオーダーしないからやめたんだ。。。。でも、作るよ!野菜(育てるところ)から」←えっ
その時は、ぜひお願いしますね!!!と堅く握手したのですが、奥様とおばあちゃまお手製のお昼までご馳走になったのですが、
。。。。。そこまででしたね。。。。。。
インド、こういうのよくあるんです。
いけるか?!やった!!と思っても次の瞬間にスタート地点に戻っていて、あれ?ルーラ??というかなんというか。常に精神と時の部屋にいる、もしくは未だにドラクエIII状態。インドです。慣れました。
さて、私がこれから長い付き合いとなるサティさんとビビくんに出会ったきっかけは、、、
私の友達で、アショックくんというのがいます。
私をサポートしてくださっている、繊維業界の大物、と言われているTさんという方がいるのですが、そのTさんの、ジム友達で小説家のスッバラオさん、、、のお友達、がアショックくんです。
その、アショックくんの弟が繊維関係なのですが、(いや、アショックくんも元は服飾なんだけど、彼は彼で私の体験談に似た裏切りにあい、その日のうちにその仕事はクローズし、事業を180度別分野に変更した経緯があります。みんな騙されてんな。。。。)
「なっッ!!お前も騙されたのか!しかもこの街、この服飾業界で……わかった、俺が絶対完成させてやる。任せろ。」
(でも任せなかった私。なぜかって、彼は成果重視。私は経緯重視。私のコンセプトをアショックくんは、完全に理解しなかったから。)
でも、そのつながりで、いろいろ紹介してもらい、ある時つながった、印刷工場を経営しているディパクくん、、、
そのディパクの所に、この日は突撃でサンプルの布を持って、試し刷りに行きました。突撃も突撃です。朝彼の携帯に電話して、
「あ、もしもし、私。覚えてる?ねえ、サンプルの布が出来たんだけど、今から試し染めしてくれない?」
これでOKするなんて、すごいなディパク。いい男です。
何より、この時、別の問題点が浮上していて、サンプルの布が洗う前は平らなのですが、洗ってしまうと、不思議なぽこぽこ模様がうきあがる布だったからです。
最初は、このポコポコは、どうかな。。。。。と思っていたのですが、その柔らかさ、軽さ、ずっとほっぺに擦り付けていたい感じから、この布だ!!と決めました。
が、果たしてこの布にプリントできるの?????という別の問題が浮上したのです。
さて、今から行っていい?と、急に電話したのに、いいよいいよ~と、歓迎してくれたディパクくん。そこで3種の機械で試し刷りをし、可能性を探りました。ちなみに彼の工房には、インドで一台しかない、ものすごいデジタル刷り機があります。
ディパクくんは、「このドイツ製のインクがね、No harmfulだよ! これなら絶対大丈夫だよ!!」
と教えてくれるのですが、インクはノーハームフル、と書かれていても、その原材料は、何が入っているか、なんでそれが危険で
ないのか、誰にもわからないのです。
『企業秘密』というのは体のいい言い訳でもあって、私としては、問い合わせた時にその情報を公開してくれない=やっぱ信じられない。
それでは、今までよく遭遇してきた「これ、本当にオーガニックなの?」という質問に似ています。
縫製工場「布屋がそう言うからオーガニックだ」
布屋「糸屋がそう言うからオーガニックだ」
糸屋「ジン工場(綿花のゴミを取り、ふわっとさせ圧縮までする工場)がオーガニックと言うからそうだ」
ジン「農家が、、、
この繰り返し。
絶対に信じられるものを手に入れたかったら、0から探し求める必要がありました。
今までたくさん直撃問い合わせ(実際にアポとって会う)で経験した、『うちのはオーガニックコットン(の服)です』と言っても、実際その会社の人に直接面と向かって問い合わせてみると、上のやりとりと同じで、結局出どころわからず。
(中には、オーガニックコットン製品といえば、この会社!!ってくらい有名な大手さんも、結局本当のオーガニックコットンなのかは、わからないのでした。。。)(ですので、私はGOTS、ETICOといったオーガニックコットンである証明書を信じていません。だって、過去にそうでない商品も、その証明書をとって、承認番号貼り付けている会社も出会っているので、その程度と思っています。)
だからこそ、染めもインクも、自分が信じることができ納得できるものは、一体どこに。。。。ていうか、作れないの??と悩んでいたのです。(ちなみにここにたどり着く前にもオーダーを置いていた会社がありますが、染めとプリントは特秘情報で私に公開できないと言われたので、こちらも私の持っている知識や技術をシェアして一緒に良いもの作りたいと思っていたけれど叶わなかったので、その取引先は諦めました。)
さて、そのディパクくん。試し刷りの後に私が何度も何度も「ねえ、ナチュラルなインク、ないの?誰か知らない??本当に知らないの??誰か一人くらいいないの??」としつこく聞いていると、
そういえば、、、あったような。。。。。
ガサゴソと、印刷機の横の物置の奥深くから、袋に入った小さな小瓶を3つ、取り出しました。
(ちなみにディパクくんの工房は、これから引っ越す予定だから、と毎回言いつつ掃除しないため、あんまり美しいコンディションではありません。なんていうか、片付け下手)
「これ、ナチュラルな原材料のインク。サンプルに、って昔もらったんだけど、今あること思い出したよ!」←えっ
。。。。しかも容器を一度も開けた形跡がない。。。。。ーー;
「ちょっと、その工場の人に、連絡取ってもらえる?今すぐ。」と頼み込み、そして、電話してつながった相手が
ビビくんでした。
「えっ?ナチュラルな染料を探してる!?本当に?(なんか嬉しそう)今から見に行きたい??いいよ!今から迎えに行くね!!!」
えっなにこの凄く嬉しそうな人。
そして約10分後、まんべんの笑みと共に現れたビビくん。
私の心の中では、この過去5年間の失敗、嫌な人、様々な思いが、頭の脳裏を怒涛の勢いでフラッシュバック。
大丈夫?
この人大丈夫?
慎重に。ちゃんと見極めなくっちゃだよ。。。。
そして案内されたのは、町から内陸の方へ行った工場の一角。
「あの染料ね、ディパックと、あともう一人に渡したんだ。二人とも刷り工場経営者だから。でも、ディパックは一度もフィードバックくれなかったんだけど」←
「ああ、なんせ袋も未開封だったからね!笑(でもだからこそビビくんに繋がれたから、ディパクくんが放置保管しておいてくれてラッキーだったのかも)」
ラボに着くと、もう一人の刷り工場経営者である人が試し刷りした、という布を見せてもらいました。
。。。。悪くない。
てか、いいんじゃ。。。
「でも、オレンジと緑、後この2つを合わせた茶色の3色しかないんだ。でもこの3色は色落ちもあんまりしないし、変色もしないよ!」
(これがその布。綺麗に刷れた状態だったのだけど、思いっきり市販の洗剤でこすり洗いした後。洗剤の種類によっては、激しく色落ちし、しかも滲んでいる)
。。。。うーん。3色じゃあ物足りないな。。。。
私がボソッとつぶやくと、
『フォッフォッフォ。可能じゃよ』
だっ 誰?!?
いきなり背後から現れたのが、マイクロバイオロジストのサティさんでした。
このラボが今まで訪れた様々な工場と明らかに違うのは、ここでだったら自分で好きな原材料から色を抽出できる(かも)。自分の目で判断できる。何が入っているか、ちゃんと公開できる!!これです。
普通、インクはインクの問屋から買うしかないのです。
『インクメーカーが安全って言ってるからたぶん安全。』
これに、何度も騙されたんですもの。
エコフレンドリー
ウォーターベース
どちらもケミカルです。
さらに、染めの前に下洗いするんですけど、たいていの工場がケミカルウォッシュです。せっかくのオーガニックコットンの布をケミカルウォッシュ。。。
何はともあれ、こうして色を1から作れるかもな人とラボに出会えたのでした。
長くなってきたので、つづく
左から、ビビくん、サティさん、助手さん。
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