オーガニックコットンを何で染める?ラボのみなさんとの出会い1と2で書いた続きになります。
ラダさんのところでテスト染めをしてもらった時、私はちゃっかりこんな事を聞き出していました。
「ラダさんは、誰から染めを学んだの?同じようにナチュラル染めをしている人、他に知りませんか?」
同業者のことは同業者に聞け。
大胆にも、ライバルを教えろと、頼み込んだのです。
もちろん怪訝そうな顔をしたラダさんでしたが、正直に、ある一人の人の名前を教えてくださいました。その名は、『シヴァマハリンガン』。。。。なんか、ゲームのボスキャラでありそうな、強そうな名前です。さらに大胆なことに、私はラダさんに、マハリンさん(敢えてこの呼び名にさせてください。可愛いから)2、電話かけて欲しいとお願いしました。←
「多分君は、僕よりもマハリンさんを選ぶと思う」 と、ラダさん。なんで?と尋ねると、「マハリンさんは、染めだけじゃなく、ブロックプリントもできるから。」
ブロックプリントとは、インドの伝統技法の一つで、簡単にいうと、木版です。
「もしマハリンさんのところ一箇所で全てできるなら、それはありがたいけれど、でもまだお会いしてないし、何も見ていないから、なんとも言えない、けれど、誰がよかったか、ちゃんと連絡しますね。」と、私は公開3つ股宣言。そして、さらにさらに大胆強引なことに、その翌日のアポをお願いしたのです。
翌朝向かった場所はセーラム。イーロードから電車で2時間、ティルプールから3時間です。
この日はヒンドゥーびとのお正月に当たる日で、ティルプール駅は、家族でどこかの親族のお家へ向かう人でごった返していました。
セーラム駅に、マハリンさんは奥様と迎えに来てくださいました。そして車に揺られること30分。。。。案内された先は、自宅。
そこで、ご自身で染めとプリントを施したという、たくさんのサリーを見せていただきました。
「堅牢度はどのくらいですか?」
「10回洗った後で、3〜4だなあ」
(数字の10が、色落ち変色がほぼないことを表します。)
うーん。3〜4。そんなもんなんだろうなあ。。。なんとかできないかなあ。。「で、工場はどちらですか?見に行けますか?」と尋ねると、想像もしてなかった回答が!!
「実は、3ヶ月前に、クローズしたんだ。誰もナチュラル染めをしないから」
えっ!!!!!
そんなー。。。。。。
マハリンさんは、大学で染めの教授を長いことされてきて、リタイヤされたそうです。そして、「30年間教えてきて、ケミカル染めではなくナチュラル染めを選んだ学生は、たった6人しかいなかった。。。。」という残念な現実のお話を聞き、改めて、人は安直安易な方へと流れていくんだなあ、と思いました。でも、自分の子供の子供の子供の、、、って、何代先をも考え、何を世に出し残すか、って時、できるだけ地球環境を汚さないものを作りたいと私は思うんです。川に洗い流しても大丈夫な染料。そのまま捨てたとしても、自然に還れるような布。
ティルプール、イーロード、セーラム、どこも繊維業で発展してきた街ですが、そこを流れる川は、工場から垂れ流された排水で、非常に残念な状態になっています。今現在は、政府が細かく環境ルールを作り、川に流してはいけないことになりましたが、一度汚してしまった環境を元に戻すのは、簡単なことではありませんよね。
何から色を抽出し、どう染めたか、細かく記載された分厚いファイルも見せていただき、ああ、でもマハリンさんはオーダー受けることはないんだよなあ。。。。と私が遠い目をしていたところ、「いや、私の友達が、仕事請け負っているから大丈夫だよ」と。
インドあるあるな展開です。一人誰かにつながると、その次の人、次の人、、、とつながっていく。これは、うまくいくと素敵人脈を形成できますが、一つ間違うと、全てダメダメになるところが特徴です。がしかし、「すみません、今から会えるか聞いていただけますか?ええ、もちろん今日が正月元旦だとわかった上でお願いしています。」
こうして、急遽向かうことになった先で紹介されたのが、これまた『ラダクリシュナンさん』でした。イーロードの彼と同じ名前で紛らわしいので、ここではクリシュナさんとします。
びっくりしたのは、私の布をお願いしている工場のオーナーさんと、このクリシュナさんがお知り合いだったこと。世界は狭いです。距離は電車で8時間ですが。
クリシュナさんは、先染め(さきぞめ)と言って、糸の状態で染める方法を勧めてきました。その方が持ちがいい方と。でも私がやりたいのは、糸で模様を作るのではなく、染めと、プリントの併用。うーん。。。。。少し、悩みましたが、ここも、オーダーを置くことはないな。と思いました。なぜかというと、クリシュナさんの顔が、『お金大好き』というタイプだったから。(とっても失礼な書き方でごめんなさい。でも、私と理念が違うと感じたから、やはりお願いしてもうまくいかないだろうなあ、、、と思ったのは本当です。)
相手が工場持っているかどうか、どんな人か、何ができるか、こういうのも、直接お会いしてみないとわからないもの。なので、今回もセーラムまで来て、よかったと思いました。
ティルプールまで戻ると、ビビくんが電話かけてきてくれました。人懐っこい笑顔で、「インクサンプルができたよ!」と。
駅まで迎えに来てくれたビビくんとラボへ行くと、マイクロバイオロジストのサティさんが、これまたニコニコしてて、「ほら、他の色もできただろう!」と手渡してくださったのが、このインクたちです。
この時点で、ピンク色が変色してしまう問題と、あとバインダー(色の定着液)が、ナチュラルなものが手に入らないから作るしかない、あとはもっと素敵な青色が欲しいとか、言い出したらキリがないけれど、いろいろ希望や問題があったのですが、「一つずつ解決していくから、大丈夫。」と言っていただけて、なんだか先に進めるかも、、、という気持ちになったのでした。
つづく
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